大脳術中捺印標本で多発性硬化症と診断した一例 

○坪井 智子、高橋 恵美子、藤井 佳穂、水野 里美、宮下 拓也、櫻井 包子、
和田 栄里子、水野 義己、佐藤 允則、高原 大志、伊藤 秀明、佐藤 啓、
大橋 明子、都築 豊徳

症例

脳 20歳代 女性
20歳代女性。10年ほど前から感覚障害・運動障害を認め、1年前に当院を受診し、頚椎MRIにてキアリ奇形と診断された。また、頭部MRIにて大脳白質3か所に病変がみられた。キアリ奇形に対しては治療を行い症状は改善したが、経過観察中に大脳白質病変の1か所が急速に拡大した。このため脳腫瘍否定目的で、脳生検施行となった。

細胞診所見

好酸性の豊富な細胞質を持ち、細胞質突起を有するアストロサイトを認めた。それらの細胞には、核の大小不同がみられた。また背景には多数の組織球が認められたが、壊死は見られなかった。以上より、脱髄性疾患の細胞像と考えられ、臨床経過と画像所見から多発性硬化症と診断した。

組織所見

好酸性細胞質を有するアストロサイトの粗で均等な増生が認められ、多数の組織球の浸潤や血管周囲性リンパ球浸潤が見られた。また軸索の残存を認めた。以上より、脱髄性疾患(多発性硬化症)と矛盾しない所見であった。

まとめ / 考察

多発性硬化症とhigh gradeのアストロサイトーマの細胞像は類似しており、鑑別には組織球の有無が重要である。また、多発性硬化症の診断には、臨床情報が必須である。