甲状腺乳頭癌に合併した好酸性細胞型濾胞腺腫の一例

櫻井 包子、宮下 拓也、和田 栄里子、佐藤 允則、水野 義己
北村 淳子、高橋 恵美子、横井 豊治
愛知医科大学病院 病院病理部

症例

甲状腺 50歳代 女性
高脂血症コントロール不良の為施行した頸動脈USにて甲状腺腫瘍を指摘され、当院紹介受診。
右甲状腺穿刺吸引細胞診にて乳頭癌と診断。
左にも数個の結節を指摘されそのうちの一か所より穿刺吸引細胞診が施行された。

細胞診所見

背景にRBCと泡沫細胞を少数認め、細胞質が広く、顆粒状で、核小体の目立つ細胞が孤立性~疎な結合で認めた。
それらの核に核溝は認めるが明らかな核内封入体は認めず、好酸性細胞腫瘍を考える所見とし鑑別困難とした。

組織所見

肉眼的に左葉下部と中部に合わせて3個の腫瘤を認めた。
そのうち2個には立方状の細胞が乳頭状または濾胞状に増生していた。
核溝、核内封入体がしばしば認められ、Papillary carcinomaと診断した。
残りの1個には核小体明瞭な類円形核と好酸性細胞質よりなる多稜形細胞が胞巣状に増生しており、Oncocytic adenomaと診断した。
またそこには繊維瘢痕化があったため、この部位から穿刺吸引細胞診が行われたと考えられた。

まとめ / 考察

好酸性細胞は正常甲状腺にも出現し、橋本病や腺腫様甲状腺腫でもしばしば出現する。
非腫瘍性の好酸性細胞でも核の大小不同が認められ、腫瘍か非腫瘍かを鑑別することは難しいが、背景所見や細胞学的特徴をよく観察し、総合的に判断することが重要である。

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