鑑別に苦慮した子宮類内膜腺癌の一症例

酒井 千早  櫻井 包子  佐藤 允則
佐野 順司  水野 義己  岩淵 英人
高橋 恵美子  原 一夫
愛知医科大学病院 病院病理部

症例

子宮内膜 50歳代 女性
症例:50歳女性(閉経前)。
既往歴:高血圧、糖尿病で近医治療中。
月経不順があり、1年前より不正性器出血を認めていたが放置。
3ヶ月前より漿液性の帯下、異臭があり、近医受診。
子宮体癌疑いにて当院紹介。子宮内膜擦過細胞診を施行。
受診時のMRI画像では、子宮体部内腔を充満した腫瘍が頚部に向けて外方性発育をし、子宮体癌などが考えられた。
受診から1ヶ月半後に拡大子宮全摘、リンパ節郭清術を施行。

細胞診所見

壊死性背景であり、重積性を見る腺細胞集塊と散在性ないしシート状の紡錘形細胞が見られた。
腺細胞集塊はN/C比が高く、核は円形から類円形で、明瞭な核小体を認め、高分化型内膜腺癌を考えた。
紡錘形細胞は細胞質が広く、核形不整で、多核のものもあり、一部には好中球大の大型核小体を持つ細胞も認めた。
内膜腺癌の可能性が高いが、それに加え、散在性に出現している異型紡錘形細胞は非上皮性細胞ではないかと考えた。

組織所見

子宮体部から頚部に向けて突出する腫瘍を認めた。

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子宮体部には高円柱状の異型腺上皮が分化した腺腔を形成し増生する endometrioid adenocarcinomaG1に相当する領域が病変の多くを占めていた。
頚部付近にはendometrioid adenocarcinomaに混在して、異型の少ない重層扁平上皮巣を一部に認めるが、多くは核形不整、細胞質が広い好酸性紡錘形細胞や多稜形細胞を認め、腺癌細胞との移行像も見られた。
異常核分裂像も多く認めた。扁平上皮への分化を伴う類内膜腺癌と考えた。

まとめ / 考察

腺癌細胞と紡錘形細胞を認めた場合、その相互関係や出現様式に注目することが大切である。
また、本症例は腺癌細胞から扁平上皮成分への移行像を認めることにより、類内膜腺癌と判定することは可能であると考えた。

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