上顎歯肉病変の一例

江原道子(DDS)1、中川 篤(CT)2、中尾寿奈(DDS)1、落合隆永(DDS)1
諏訪裕彦(DDS)1、川原田孝司(DDS)1、永山元彦(DDS)1、宮崎龍彦(MD)2

症例

左側舌縁部 70歳代 女性
採取部位・方法 :左側舌縁部・歯間ブラシによる擦過
臨床情報 :以前より舌縁部に白色病変を認めていたが、最近になって、白い部分が盛り上がってきたため、受診された。

細胞診所見

壊死物質、リンパ球主体の炎症性細胞を背景に、角化性・非角化性扁平上皮細胞が孤在性、小〜中型の集塊状にみられた。各細胞の核は細胞の中心部に位置しており、細胞形態は、類円形、紡錘形など、多彩な形態を示していた。角化細胞は、細胞質輝度上昇、核濃染、核腫大などの異型を伴っていた。非角化細胞は、表層型〜深層型を呈しており、深層型細胞では、N/C上昇、核型不整、大小不同、核小体の明瞭化や腫大などの異型を認め、集塊の辺縁は不規則で、核間距離も不均一であった。

組織所見

大小の胞巣を形成しながら浸潤性に増殖する扁平上皮由来の腫瘍が観察された。各々の胞巣は、辺縁部で基底細胞様を呈しており、中心部には角化を伴っていた。

まとめ / 考察

 典型的な口腔の高分化型扁平上皮癌の細胞像として提示した。口腔粘膜病変の細胞診は、採取部位によっても異なる像を示し、また、肉眼的には悪性腫瘍を疑う所見であっても、細胞像は積極的に悪性を示唆する所見に乏しいことがあり、判定に苦慮することが多い。日常の細胞診判定において、口腔細胞診症例が少ないと考えられるため、供覧する機会も重要である。

病院別