判定困難であった胆汁細胞診の1例

安居直(CT)1) 福山隆一(MD)2) 千田美歩(MT)1) 河内誠(MT)1) 若松真理(CT)1)
住吉尚之(CT)1) 横井智彦(CT)1) 西尾一美(CT)1) 石榑清(MD)3) 中島伸夫(MD)1)
1)JA愛知県厚生連江南厚生病院 臨床検査技術科
2)同 病理診断科 、3)同 外科

症例

胆汁(ENBD) 70歳代 女性
70歳代女性。上腹部痛、黄疸にて他院より紹介。生化学的検査にて肝機能障害、CRP上昇、CTにて胆嚢腫脹を指摘され、精査入院。
ERCPにて肝門部腫瘍認め、ENBD留置。その時に採取された胆汁にて細胞診を施行し、同時に得られた組織片が病理組織検査に提出された。
腫瘍マーカーは、CA19-9の上昇がみられ、CEA、CA125の上昇はみられなかった。

細胞診所見

炎症性背景として、大小不同およびやや不規則な重積性を示し、時に柵状配列を示す異型細胞の集塊を認めた。
異型細胞の核は類円形で偏在傾向を示し、クロマチンは粗顆粒状で、1個の核小体を有していた。
以上の所見から異型円柱上皮細胞とした。

組織所見

組織片
乳頭状構造をなして増生する異型細胞を認め、adenocarcinoma と診断した。
手術材
腫瘍は比較的限局性で上部(Bs)中部(Bm)の境界部胆管に位置し、胆管・胆嚢管合流部(J)には達していなかった。
腫瘍は主として粘膜内にあるが漿膜に達する部分がある(ss)。漿膜面には露出していなかった。
adenocarcinoma, intestinal type の組織像であり、s-, hif0, ginf0, panc0, du0,hm0, dm0, em0 of the choledochusと診断した。

135_02_ex

[免疫組織化学的染色]
後日、細胞診標本にてセルブロックを作成し、CK7、CK20、p53、CEAの免疫組織化学的染色を行った。
結果はすべて陽性であり組織診と矛盾しなかった。

[遺伝子変異の検出]
p53(エクソン5a,6,7)、k-ras(コドン12)遺伝子変異の検出を行った結果、両方に遺伝子変異が検出された。

まとめ / 考察

胆汁細胞診では細胞異型が乏しいことや、新鮮な細胞が得られないことが多く、そのほとんどが変性を伴っているため、細胞判定が困難なことが多い。
このことから今回のように免疫組織化学的染色および遺伝子変異の検索と細胞診との併用が望ましいと考える。

病院別