喀痰中に出現した気管原発腺様嚢胞癌

古畑彩子(CT) 1)、高橋恵美子(MD) 1,2)、櫻井包子(CT) 1)、坪井智子(CT) 1)、早川里美(CT) 1)、和田栄里子(CT) 1)、佐藤允則(CT) 1)、大橋明子(MD) 1,2)、都築豊徳(MD) 1,2)

症例

気管 60歳代 男性
呼吸苦、血痰、気管支腫瘤。喀痰細胞診

細胞診所見

結合性の緩い重積性集塊が出現していた。集塊中の細胞は、N/Cが高く、核は小型類円形、クロマチンは微細顆粒状で増量した異型の弱い細胞であった。また、異型細胞が粘液球を取り囲む像や、紡錘形の筋上皮/ 基底細胞様細胞との二相性が認められた。以上の所見より、細胞診判定は疑陽性で、腺様嚢胞癌を推定した。

組織所見

類円形異型核を有し、クロマチンの増量した腫瘍細胞が、多数の小嚢胞腔形成を伴い不規則胞巣状、腺管状に浸潤性増殖する像がみられた。腫瘍細胞は導管様上皮細胞と筋上皮・基底様細胞の2種類の細胞から構成されていた。小嚢胞は多数の偽腺腔と真の腺腔から成り、硝子様間質が目立つ領域もみられ、腺様嚢胞癌と診断した。

まとめ / 考察

喀痰中に腫瘍細胞が出現した気管原発腺様嚢胞癌を経験した。
喀痰細胞診ではギムザ染色標本を作製しないため、唾液腺型腫瘍の確定診断に苦慮する。さらに、腺様嚢胞癌は異型が弱いが、粘液球を取り囲む像などの特徴的な所見を念頭に置くことで、組織型の推定が可能であった。

病院別