外陰に発生したExtramammary Paget’s diseaseの1例

愛知医科大学病院 病院病理部
玉置和仁 和田栄里子 櫻井包子 佐藤允則 佐野順司 水野義己 小林瑞希 北村淳子 高橋恵美子 横井豊治

症例

外陰部擦過 60歳代 女性
3ヶ月程度前より外陰部に掻痒感を自覚し近医を受診。
当院紹介となり、外陰部擦過細胞診及び生検を行った後手術が施行された。

細胞診所見

表層扁平上皮細胞および無核扁平上皮を背景に基底層近傍と思われる細胞集塊や、細胞質内粘液を有する異型細胞集塊を認める。
粘液を有する細胞は、核偏在性で核形不整であるが、核クロマチンの増量は見られない。
これら粘液を有する細胞からextramammary Paget’s diseaseが疑われた。

組織所見

表皮内、毛嚢、汗管内に淡明な細胞質を有する異型腺上皮の胞巣状、孤在性増生が見られる。
腫瘍細胞はPAS染色、免疫染色にてCK7に陽性であり、extramammary Paget’s diseaseと診断した。

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まとめ / 考察

【考察】
今回本疾患を疑う細胞は標本上に極少数であり、核クロマチンの増量はなく細胞の異型も弱いため診断に苦慮した。
また、外陰の擦過スメアでは現れる頻度が少ない基底層近傍と思われる細胞集塊が認められた。
組織診標本と見比べると基底層近傍の細胞が表層に近い部位までPaget細胞によって押し上げられている所見があり、また有棘細胞間にPaget細胞が浸潤しているため細胞の接着性が低下して、擦過スメアに出現しているものと推察された。
この様な基底層近傍と思われる細胞集塊の出現は本疾患を疑う有用な所見となる可能性がある。
本疾患の診断の決め手となる細胞質内粘液を有するPaget細胞を見落とさないことが特に重要であるが、臨床情報、例えば掻痒感や難治性の湿疹などの所見も注視する必要がある。
また、病変部の擦過細胞診ではPaget細胞は出現しにくいとされ、見られても少数な事が多いことを念頭に鏡検することが重要である。

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