子宮頸部腫瘍の一例

藤田 奈央1)  太田 裕子1)  羽根田 正隆2) 越川 卓3) 谷田部 恭2) 

症例

子宮頸部 30歳代 女性
不正性器出血を主訴に近医を受診。子宮頸部細胞診でAGC、生検にて腺癌を指摘され、精査治療目的に当院を紹介受診。

細胞診所見

背景に壊死物質は認められなかった。その中に偏在性核で核クロマチン増量を示す腺系異型細胞の不整形集塊を認めた。柵状配列や腺管構造もみられ上皮内腺癌を疑う細胞と考えた。またN/C比が高く細顆粒状の核クロマチンを有する傍基底型核異常を疑う細胞もみられた

組織所見

子宮頸部のSCJにおいてクロマチン増量を示す異型上皮が明瞭な

腺管構造や充実性胞巣構造を形成し増生していた。充実性増生を示す成分はN/C比や核分裂像が目立ち、免疫染色ではsynaptophysinchromogranin ACD56が陽性であり神経内分泌分化が示唆された。以上の所見より、神経内分泌癌成分を伴う腺癌と診断された。面積的には腺癌成分が8割で神経内分泌癌成分は2割であった。腺癌成分で微小浸潤がみられたが神経内分泌癌成分はin situであった。

[まとめ] 稀な子宮頸部腫瘍の症例を経験した。細胞診スメア標本では2種類の異なる異型細胞を認識することはできたがLBC標本では難しく神経内分泌癌との推定には至らなかった。腺系病変を疑う症例では、異なる成分の混在を念頭に注意深く鏡検することが重要と考えた。

病院別