穿刺吸引細胞診で得られたメルケル細胞癌の一例

新田憲司、嘉味田ひなこ、水野良昭、長田裕之、水嶋祥栄、瀬古周子、橋本光義

症例

右耳前部の腫瘤 90歳代 男性
14年前に左耳下腺の多形腺腫。1年前に右眼瞼腫瘍を摘出。今回、右耳前部の腫瘤を自覚され、精査目的に当院耳鼻科を受診。

細胞診所見

血性背景に、小型円形核で極めてN/C比の高い腫瘍細胞が孤在性から一部木目込み様配列にて出現。腫瘍細胞は、軽度の核の大小不同を認め、核クロマチンは微~細顆粒状で疎に分布。核縁の肥厚はなく、核小体は目立たない。胞体は、ライトグリーンに淡染性で狭小ないし裸核状を呈していた。
免疫細胞化学染色において、CK20がドットライク様に陽性、シナプトフィジンに陽性、TTF-1は陰性。

まとめ / 考察

メルケル細胞癌は、メルケル細胞由来の神経内分泌腫瘍とされ、好発部位は頭頸部や皮膚とされており、耳鼻科領域では非常に稀である。メルケル細胞癌の細胞像は、小型円形核で核クロマチンが微ないし細顆粒状を呈し、結合性が非常に乏しかった。形態学のみでは、小細胞癌や悪性リンパ腫との鑑別は困難と思われるが、特徴的な免疫組織化学的所見を呈するため、免疫細胞化学染色を追加することで確定診断することが可能と考えられる。

病院別