組織型推定困難であったびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の一例
症例
リンパ節 60歳代 男性
60歳代男性.右頸部の疼痛・腫脹を自覚,扁桃腫大が認められ,精査目的に扁桃生検・頸部リンパ節穿刺吸引細胞診を施行.
60歳代男性.右頸部の疼痛・腫脹を自覚,扁桃腫大が認められ,精査目的に扁桃生検・頸部リンパ節穿刺吸引細胞診を施行.
細胞診所見
多数の好中球と壊死細胞を背景に,緩い結合性を示す異型細胞を認めた.異型細胞はパパニコロウ染色でライトグリーン好性,ギムザ染色で赤紫色の細胞質を有し,N/C比はさほど高くなかった.核は中心性で一部に核型不整が見られ,クロマチンは融解状~顆粒状であった.
組織所見
扁桃生検ではアポトーシスや核分裂像を伴いながら,クロマチン繊細で核小体明瞭な類円形核を有する異型細胞のびまん性増生が認められた.低分化癌と悪性リンパ腫を鑑別に挙げ,免疫染色を行ったところCD20陽性,Cytokeratin(AE1/AE3)陰性となり,びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断した.後日施行された頸部リンパ節生検では,壊死・変性を伴って扁桃生検に類似した異型細胞が認められ,これらの細胞は免疫染色でCD20陽性を示したことから,扁桃病変と一連の病変,DLBCLであると診断した.
まとめ / 考察
典型的なDLBCLは孤立散在性に出現し,細胞質はギムザ染色で好塩基性(青色)を示し,N/C比は非常に高く,クロマチンは顆粒状で一様であるとされる.本症例ではこうした特徴的な細胞所見が認められず,DLBCLの可能性を推定するのは困難であった.しかし標本中にはアポトーシス小体や核破砕物,核線が出現しており,これらは悪性リンパ腫に特異的ではないがしばしば認められることから,注意するとよいと思われた.