肺硬化性血管腫の一例

愛知医科大学病院 病院病理部
佐藤允則 酒井千早 櫻井包子 佐野順司 水野義己 岩淵英人 高橋恵美子 横井豊治

症例

術中肺擦過 20歳代 男性
28歳男性、検診にて左肺に異常陰影を認め、他院を受診するが確定診断がつかないため、検診より半年後に当院受診。
CTにて左肺S6中枢側に20×20mm程の辺縁平滑な結節影を認めた。
気管支鏡検査を施行するが確定診断に至らず、胸腔鏡下腫瘍核出術を施行し、術中迅速病理診断および迅速細胞診を施行した。

細胞診所見

術中腫瘤擦過細胞診では、背景に泡沫細胞を認め、またヘモジデリン顆粒を貪食した組織球も認めた。
腫瘍細胞はライトグリーンに濃染する硝子化した間質を軸とした乳頭状細胞集塊状、シート状集塊状および散在性に認めた。
細胞および核に大小不同を認め、核は円形から楕円形で核縁は薄く、少数の腫瘍細胞には核内封入体を認めた。
クロマチンは細顆粒状で比較的均等分布し、1~2個の小型核小体を認めた。

組織所見

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立方状の上皮細胞が乳頭状あるいは乳頭腺管状に増生し、腫瘍間質には硝子化が目立つ。
上皮細胞は比較的小型で軽度クロマチン増量を伴う細胞とそれよりもやや大型でクロマチン増量が目立たない細胞の2種類がある。
腫瘍腺管腔には泡沫細胞の浸潤を認めた。以上の所見より肺硬化性血管腫と診断した。

まとめ / 考察

肺硬化性血管種は腺癌との鑑別が困難な場合がある。
肺硬化性血管腫には硝子化した間質を軸とした乳頭状細胞集塊、比較的おとなしい核所見および背景に泡沫細胞や
ヘモジデリンを貪食した組織球を認めることが多いことが鑑別の助けになると思われる。
肺硬化性血管種は40~50歳代の女性に多く発生するが、年齢や性別が典型的でないことがあることも念頭におく必要がある。

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