胃EUS-FNAで診断が困難であったグロムス腫瘍の一例

坪井 智子、高橋 恵美子、藤井 佳穂、水野 里美、宮下 拓也、古畑 彩子、
櫻井 包子、和田 栄里子、佐藤 允則、露木 琢司、高原 大志、伊藤 秀明、佐藤 啓、
岩越 朱里、大橋 明子、都築 豊徳

症例

胃 40歳代 女性
40歳代女性。貧血の精査中に、上部消化管内視鏡で胃に粘膜下腫瘍がみられ、EUSにて、胃の固有筋層内に、境界明瞭で血流豊富な粘膜下腫瘍を認めた。GISTが疑われ、EUS-FNA施行となった。

細胞診所見

N/C比が高く、均一な小型類円形核を有する細胞集塊を認めた。細胞の結合性は強固であり、細胞境界は不明瞭であった。クロマチンは細顆粒状~ごま塩状を示し、核小体は目立たなかった。また、集塊中に粘液様物質や血管間質を認めた。以上の所見と胃粘膜下腫瘍であることを踏まえ、カルチノイド腫瘍を考えた。しかし、集塊中に粘液様物質がみられたことや血管間質が目立つ点が、カルチノイド腫瘍の典型的所見と異なったため、カルチノイド腫瘍と断定することができず、鑑別困難とした。

組織所見

固有筋層内に、境界明瞭な結節性病変がみられた。スリット状の血管腔周囲に、異型の乏しい類円形核を有する細胞の均一な増殖がみられた。腫瘍胞巣間には、好酸性ないし粘液腫状間質の介在が認められた。免疫組織化学的に腫瘍細胞は、αSMA(+)、collagen IV(+)、caldesmon(focal+)、synaptophysin(+)、CD56(-)、chromogranin A(-)
、CD34(-)、C-KIT(-)、S-100(-)、ki-67 labeling index:2-3%を示し、グロムス腫瘍と診断した。

まとめ / 考察

胃に発生したグロムス腫瘍のまれな一例を経験した。グロムス腫瘍と鑑別が困難であったカルチノイド腫瘍の細胞像と比較検討した結果、核形やクロマチンは類似していたが、核の大きさはグロムス腫瘍の方が小さいことが分かった。また、グロムス腫瘍はカルチノイド腫瘍と異なり、細胞の結合性は強固で細胞境界は不明瞭であり、粘液様物質や豊富な血管間質がみられた。以上より、これらの所見が鑑別に有用ではないかと考えた。
また、グロムス腫瘍は通常固有筋層に発生するため、腫瘍の発生部位も診断に重要な所見の一つだと考えられた。

病院別