胸水中に出現した浸潤性胸腺腫の一例

名古屋第二赤十字病院

症例

術中胸水 60歳代 女性
4年前に交通事故で前胸部を打撲。CTにて前縦隔腫瘍を認め精査。
胸腺全摘出術中に胸水を認めたため細胞診が施行された。

細胞診所見

未熟~成熟リンパ球を背景に、裸核様で細胞質が不明瞭な腫瘍細胞が散在性に見られた。
腫瘍細胞は成熟リンパ球よりもやや大型の円形~楕円形のうす墨状の核で、クロマチンは微細顆粒状に分布し増量は見られなかった。
免疫染色では、Keratin (+)、calretinin (-)であった。

組織所見

腫瘍は周囲を被膜様構造で囲まれるが、被膜外への浸潤を認め、肺及び心嚢への浸潤を認めた。
腫瘍内では小型リンパ球を伴って胸腺上皮細胞の増生を見た。
上記よりThymoma,type B2と診断された。
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まとめ / 考察

胸水中に胸腺腫の細胞が見られた場合、裸核様で細胞質が不明遼な円形~楕円形の腫瘍細胞を散在性に認めることが分かった。
胸腺腫の浸潤像が胸水で見られるのは稀であり、胸腺上皮の同定はパパニコロウ染色では難しいため、上記の細胞像が見られた場合には免疫染色で確認する必要性を感じた。

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