胸水中に出現したMerkel細胞癌の一例

〇宮下拓也、高橋恵美子、坪井智子、藤井佳穂、水野里美、古畑彩子、櫻井包子、和田栄里子、佐藤允則、高原大志、佐藤啓、大橋明子、都築豊徳

症例

胸水 70歳代 男性
4年前に鼻前庭皮膚原発のMerkel細胞癌にて当院紹介。約2年後に胸部にCTで26×13mmの皮下腫瘤が出現。右胸水貯留にて細胞診提出。

細胞診所見

結合性の緩い平面的または重積した集塊を認め、一部孤立散在性にも出現していた。軽度のmoldingを伴う小集塊も少数認めた。小型類円形細胞が単一に増生し、N/C比が非常に高く、細胞質はライトグリーンに淡染性で、M-G染色標本では細胞質内空胞が目立った。クロマチンは微細顆粒状で増量はなく、核縁の肥厚や核小体は目立たなかった。一部の核に軽度の切れ込みを認めた。孤立散在性に出現し、細胞質内空胞を伴うことから悪性リンパ腫の可能性や重積性のある集塊や軽度のmoldingがあり小細胞癌の可能性も考えられた。

組織所見

胸部皮下腫瘤の生検材料は微細顆粒状のクロマチンを有した小型類円形腫瘍細胞が胞巣状ないし索状に増殖した腫瘤で、免疫染色でCytokeratin (AE1/AE3, CAM5.2)、CK20、EMA、CD56、Synaptophysin、Chromograninが陽性であり、Merkel細胞癌の転移と診断した。その直後に右胸水が貯留し、この検体のセルブロックで免疫染色を行ったところ、生検材料と同様の結果であった。

まとめ / 考察

Merkel細胞癌は稀な腫瘍で推定することは困難であったが、本症例は小細胞癌や悪性リンパ腫とはクロマチンや核異型等が違い、特に辺縁がスムーズで平面的な集塊や重積性を伴う大型の集塊の様な多彩な出現パターンを呈していた点が鑑別のポイントであった。

病院別