腹水中に腫瘍細胞を認めた卵巣未分化胚細胞腫瘍の一例

愛知医科大学附属病院 病院病理部
佐藤允則、伊藤千早、大橋包子、佐野順司、水野義己、岩淵英人、高橋恵美子、原 一夫

症例

腹水 20歳代 女性
29歳女性、下腹部腫瘤感を主訴として当院を受診した。
生化学的検査所見ではLDH2810U/Lと高値を示したが、
AFP、CEA、CA19-9、CA125等の腫瘍マーカーは正常範囲内であった。
MRIにて径14cm大の充実性腫瘤を認め、卵巣腫瘍が疑われ、開腹術を施行。
術中時血性腹水を多量に認め細胞診を施行した。
術中迅速病理診断にて未分化胚細胞腫と診断し、右卵巣切除術を施行した。

細胞診所見

腹水細胞診では血性背景でリンパ球、組織球を多数認め、類円形の大型の異型細胞を認めた。
腫瘍細胞は散在性から疎な結合を示し、細胞質は淡明で狭小、裸核状のものも認めた。
核は円形から類円形、核縁は薄く、著明な核小体を1個から数個認め、クロマチンは細顆粒状であった。
摘出された右卵巣の擦過細胞診では核所見は腹水細胞診と同様であったが、
細胞質辺縁は明瞭のもから不明瞭なものまであり、細胞質は淡明で透明感があった。

組織所見

摘出された卵巣の大きさは14×12×10cm、重さ787g、表面は平滑で凹凸があり乳白色を呈し、割面は多結節状で充実性腫瘍であった。
組織学的には、腫瘍は胞巣状あるいは索状に配列する集団を形成し、これを繊細な線維性間質が囲み、リンパ球浸潤を認めた。
腫瘍は卵巣表面に一部露出していた。
腫瘍細胞は比較的均一で類円形を呈し、細胞境界は明瞭、明瞭な核小体を認めた。
免疫染色でPLAP(+)、AFP(-)を示しdysgerminomaと診断した。

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まとめ / 考察

若い女性で、腹水中に核縁が薄く大きな核小体を有する腫瘍細胞を認め、腫瘍マーカー上昇がない場合、卵巣未分化胚細胞腫を考える。

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