舌病変の一例

江原道子(DDS)1、松原誠(DDS) 2、中尾寿奈(DDS)1、落合隆永(DDS)1 、
石橋浩晃(DDS)2、住友伸一郎(DDS)2、村松泰徳(DDS)2、永山元彦(DDS)1

症例

右側上顎歯肉 70歳代 男性
採取部位・方法 :右側上顎歯肉・歯間ブラシによる擦過
臨床情報 :20XX年に口内炎を自覚していたが放置していた。その後範囲が増大し、排膿、出血、開口障害を自覚したため、4ヶ月後紹介受診。

細胞診所見

炎症性背景に、角化性・非角化性扁平上皮細胞が 孤在性、小〜中型の集塊状にみられた。各細胞の核は細胞の中心部に位置しており、細胞形態は比較的揃っていた。角化細胞は、淡染性で小型の核を有する細胞が主体で、ごく一部で、やや小型で細胞質輝度上昇、核濃染を認めた。非角化細胞の大部分は表層型であったが、数個の深層型細胞にはN/C上昇、核腫大などの異型を伴っていた。

組織所見

生検では、過角化、太い上皮釘脚形態を示して上皮が増殖していた。基底細胞層には極性消失、基底細胞層の重層化などがみられ、一部で滴状、蕾状に深部方向への増殖も認め、生検時診断は疣贅癌疑いとした。切除標本においては、全体的に厚い角化層に覆われており、生検時と同様の所見を呈する疣贅癌周囲には、上皮性異形成および増殖性疣贅性白板症と考えられる部分が混在していた。

まとめ / 考察

肉眼的に種々の程度に白色調を呈する領域が混在した病変の細胞診を経験したので報告した。口腔粘膜上皮の腫瘍性変化については、細胞像のみでは積極的に腫瘍性変化を示唆する所見に乏しいことが多く、部位や症状などをある程度特定できる口腔内写真が大いに参考となることを強調したい。

病院別