卵巣腫瘍 60歳代 女性
腹部膨満感、不正性器出血を主訴に、精査目的に当院紹介受診。CT画像より、下腹部に23cm大の多房性嚢胞性病変を認め、一部石灰化を伴う充実性成分を伴い、卵巣癌が疑われた。腫瘍摘出術が施行され、摘出された卵巣腫瘍から捺印細胞診を行った。

清な背景に、重積性のみられる細胞集塊、円柱上皮細胞、孤立散在性に紡錘形細胞を認めた。細胞集塊は、単一な細胞で、結合性の強い充実胞巣状集塊であり、腫瘍細胞はライトグリーン好性の多陵形の細胞質、核は類円形～楕円形、細顆粒状の核クロマチン、小型の核小体、コーヒー豆様の核溝を認め、周囲には、裸核状の紡錘形細胞がみられた。

線維性組織を背景に、核溝を有する小型の腫瘍細胞が胞巣を形成し増生しており、間質部に石灰化を認めた。乳頭状増殖や間質浸潤を示唆する所見はみられず、良性ブレンナー腫瘍と診断された。嚢胞部は、粘液性嚢胞腺腫であった。

良性ブレンナー腫瘍は、顆粒膜細胞腫の細胞所見と類似する点はあるが、コーヒー豆様の核所見の他、胞巣状の細胞集塊や裸核状の紡錘形間質細胞の存在が、顆粒膜細胞腫との鑑別点となる。