鑑別に苦慮した子宮頸部腺扁平上皮癌の一例

〇中嶋綾香、川島佳晃、坂本優里香1)、今枝義博3)、稲田健一4)、浦野誠2)

症例

子宮頸部 80歳代 女性
帯下増加にて当院産婦人科を受診し、MRIでは内膜の軽度肥厚が疑われたが、頸部及び体部に明らかな腫瘤形成性病変を認めなかった。膣部びらん、子宮留膿腫が疑われ細胞診が施行された。

細胞診所見

大小不同著明な異型細胞が集塊状、散在性に認められ、核は類円形~卵円形~紡錘形で核縁に不整があり、クロマチンは顆粒状に増加、核小体は明瞭であった。上皮性を第一に考えるが、分化度が低く腺癌か扁平上皮癌かの鑑別が困難であり、両者の混在も否定できない所見であった。

組織所見

腫瘍は頸部表層部を主体に増殖し、異型に富む乳頭状管状腺癌と非角化型扁平上皮癌の像の移行像を認めた。免疫染色では両成分ともにp16陽性であった。

まとめ / 考察

乳頭状集塊や柵状配列を呈する異型細胞は腺癌と推定できたが、孤立散在性に出現している分化の低い異型細胞が腺癌、扁平上皮癌、肉腫のいずれかの鑑別に苦慮した。腺扁平上皮癌では腺癌と扁平上皮癌の中間型や移行型の癌細胞を認める場合があり、孤立散在性に出現していた分化の低い異型細胞は中間的な形態をとる細胞であったと考えられた。癌肉腫は通常体部に隆起性病変を形成することが多く、今回の症例では可能性が低いと思われる。しかしながら、腺扁平上皮癌と癌肉腫の鑑別では各々の成分比率が様々であることや、分化の低い細胞は多様な形態をとるため鑑別が難しいものと思われた。

病院別