高齢者の前額部皮下に発生し,細胞診所見にて核内封入体が認められた異所性髄膜腫の1例

刈谷豊田総合病院

症例

頭頸部軟部穿刺 70歳代 男性
76歳,男性.若い頃から前額部皮下に腫瘤があることを自覚していたが放置していた.
徐々に増大傾向があるため精査を目的に当院耳鼻科に紹介された.
単純CT像では前額部皮下に長径27 mm大の半円形の腫瘤を認めた.境界は明瞭であり,頭蓋骨への進展や連続性は明らかでなかったPET-CTでも淡い集積像を呈した.
組織診断確定後に腫瘤摘除術が施行され,術後6ヶ月を経て再発なく経過している.

細胞診所見

病変部の穿刺吸引細胞診では,核形不整で核内封入体を有する小型細胞の集塊が散見され,甲状腺乳頭癌などとの鑑別が困難であり,組織診断を要すると結論した.

組織所見

前額部皮下から筋層にかけて,類円形で細胞境界の不明瞭な細胞が胞巣状に増殖しており,しばしば核内封入体の存在を認めた.周囲組織の破壊や壊死は認めなかった.免疫組織化学的検討を行ったところ,腫瘍細胞はTTF-1 (-), HBME-1 (-), cytokeratin 7 (-), cytokeratin 20 (-), EMA (+)であった.MIB-1 labeling indexは1%以下であった.

まとめ / 考察

本例は細胞所見の特徴として,核内封入体が明瞭な円形ないし類円形細胞が出現したため,甲状腺の乳頭癌や肺腺癌の転移との鑑別を要した.組織像の特徴より異所性髄膜腫と診断した.
明らかな頭蓋内病変からの進展はなく,頭蓋外正中域から過誤腫的に発生したと考えた.画像所見,臨床経過から緩徐な発育を示す腫瘤であった.核内細胞質封入体が出現する腫瘍との鑑別において,良性経過を示す異所性髄膜腫も考慮する必要がある.

病院別