Metaplastic carcinoma(squamous cell carcinoma)の一例

吉本尚子・今井律子・稲垣裕介・角屋雅路・渡邊緑子・溝口良順

症例

乳腺 40歳代 女性
左乳腺穿刺吸引細胞診

細胞診所見

陳旧性の血液成分、高度の炎症細胞と変性壊死物質を背景に、異型細胞が孤在性~小集塊で認められた。扁平上皮化生を示す異型細胞が主体で、紡錘形、多方形で角化した細胞質の形態で核種大、核クロマチン濃染、核小体肥大等、軽度の核異型が認められた。

組織所見

嚢胞壁に残存する腫瘍は、細胞間境明瞭で角化傾向のある異型扁平上皮で構成される。腫瘍の内外に好中球を含む多数の炎症性細胞が浸潤し、周囲には、扁平上皮化生を伴う通常の乳管癌による乳管内病変が、散在性に認められた。Metaplastic carcinoma(squamous cell carcinoma)と診断された。

まとめ / 考察

扁平上皮癌は、乳癌の特殊型に分類され、全乳癌に対する発生頻度は約0.1%と極めて低率である。今回、その一例を報告した。乳腺は、腫瘍性、非腫瘍性含め扁平上皮化生を起こすことが稀にあると言われているが、穿刺細胞診標本中の出現細胞の細胞所見を注意深く観察することにより、良悪性の鑑別は可能である。

病院別