気管支洗浄液細胞診が有効であった健常者のクリプトコックス肺炎の1例

山田義広1),野畑真奈美1),中井美恵子1),中根昌洋1),伊藤 誠2)
1) 刈谷豊田総合病院・病理技術科、2) 同・病理科

症例

クリプトコックス肺炎 60歳代 男性
60歳代の男性。健康診断で右肺下葉の結節性浸潤影を指摘され、精査目的で簡易気管支洗浄液検査が行われた。

細胞診所見

多数の線毛円柱上皮細胞を背景にガラスビーズ状の酵母状真菌(5~10μ)が多数観察された。
一部はマクロファージに貪食された菌体を認めた。
ギムザ染色では厚い莢膜が観察された。

組織所見

壊死を背景に肉芽腫性炎症があり、細胞外やマクロファージに貪食された多数のPAS染色陽性の酵母状真菌が観察された。
莢膜の存在は不明瞭であったが、Fontana-Masson染色にて細胞壁が明瞭に陽性に染色された。
免疫組織化学的にも抗C。 neoformans抗体で組織内菌体成分が陽性であった。
細胞診所見と併せてCryptococcus neoformansによる壊死性肉芽腫性肺炎と診断した。

まとめ / 考察

病原性酵母であるC。 neoformansによる肺炎は健常者にも起こりえる。
気管支洗浄液細胞診での原因真菌の証明は、確定診断に等しい価値を有するため、注意深く酵母状真菌の同定に努める必要がある。
本例は診断確定後からfluconazole内服治療を開始し、徐々に右肺下葉の結節性浸潤影は縮小傾向にある。

病院別