「Villoglandular papillary adenocarcinoma with squamous cell carcinoma in situ」

名古屋掖済会病院 病理診断科
田中瑞穂、大池里枝、夏目園子、氏平伸子、佐竹立成

症例

子宮膣部 30歳代 女性
39歳女性 経妊3 経産2
【現病歴】
接触出血を主訴とし他院より当院に紹介受診。
内診にて子宮頚部後唇に径2cm、厚さ2mmの腫瘍を認めた。
【検体】
子宮腟部スメア(ブラシ、conventional法)
【病理診断】
Villoglandular papillary adenocarcinoma (VPA) of the uterine cervix with squamous cell carcinoma in situ

細胞診所見

比較的きれいな背景を伴って、主として孤在性に剥離した細胞が認められた。
これらの細胞は殆どが類円形でN/Cが高く、核クロマチンは微細顆粒状で濃染していた。
核は緊満感があり核小体はあまり目立ず、細胞質はライトグリーン好染性、不透明で、扁平上皮系の異型細胞と考えられ、上皮内癌の細胞と考えられた。
扁平上皮系の異型細胞とは別に密度の高い大きな細胞集塊が認められ、核は円形から類円形でほぼ均一大、クロマチンは細顆粒状で濃染し、核小体が認められた。
重積性が強く、腺系の細胞で、腺癌細胞の集団と考えられた。
一部の細胞には粘液が豊富に認められた。

組織所見

子宮頚部に約20X17mmmのポリープ様病変を認める。
ポリープ様病変部では軽度から中等度の核異型を示す円柱状細胞が、線維性結合組織性の間質を有して、乳頭状、絨網状に増殖し、わずかに浸潤を認めた。
一部には胞体に粘液を有する細胞を認めた。
この周囲の重層扁平上皮に、異型細胞が全層性に増殖する像を認めた。

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まとめ / 考察

【考察】
VPAはMucinous adenocarcinoma のまれな亜型である。
細胞異型が弱く、細胞診標本上、悪性と確定診断することが困難な場合があるといわれているが、正常の蜂巣パターンの消失、重積性のある、大きな接合性を有する細胞集団の出現、結合組織性の間質を有する乳頭状病変を見た場合にはVPAの可能性も考える必要がある。

病院別