アポクリン腫瘍の一例

愛知県がんセンター中央病院 臨床検査部 遺伝子病理検査科1)
愛知県がんセンター遺伝子病理診断部2)
愛知県看護大学3)
尾関 順子1)、鈴木 緑1)、所 嘉朗1)、北村 淳子1)、細田 和貴1)、佐々木 英一1)、谷田部 恭1)、越川 卓3)

症例

乳腺穿刺 60歳代 女性
[部位]:左乳腺
[臨床経過]
検診にて左乳房腫瘤を指摘され当院受診。
MMGにて左乳房AC領域に石灰化を伴う境界不明瞭な濃厚陰影、USでは嚢胞内腫瘤性病変が認められた。
穿刺吸引細胞診を施行。
[既往歴]
50歳代 子宮筋腫。

細胞診所見

嚢胞性背景にアポクリン化生様の核異型の弱い上皮細胞の重積性集塊を多数認める。
細胞の配列および核の極性は乱れていて、細胞質は広くN/C比は低い。
核は類円形でしばしば核腫大した細胞も見られ、核小体は大きく腫大し明瞭なものが1~2個見られる。
良性病変に見られるアポクリン化生細胞との鑑別は困難であるが、標本全体がこのアポクリン化生様細胞で占められており重責性も認められることから悪性の可能性も否定できない。
アポクリンDCISも考慮に入れるべき所見と考える。

組織所見

2cm大の嚢胞内病変で、拡張した乳管内にアポクリン化生様異型細胞の乳頭腺管状、篩状増生を認めた。核異型軽度の部分が多くを占めるものの、アポクリン化生様細胞のみからなる、広がりを有する腫瘍であることより、アポクリンDCISと診断した。

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