乳癌(浸潤性小葉癌)の子宮転移の1例

渡邉幸治¹⁾ 岩越朱里²⁾
久野欽子¹⁾ 山下美奈¹⁾ 大塲美怜¹⁾ 伊藤健太¹⁾ 澤野智也¹⁾ 
中筋美穂¹⁾ 星伶司¹⁾ 矢田啓二¹⁾ 市原周²⁾ 村上善子²⁾ 西村理恵子²⁾

症例

子宮内膜 50歳代 女性
1年半前に両側水腎症・急性腎障害を認め、精査にて右乳癌(浸潤性小葉癌)と診断、ホルモン治療中。今回、左卵巣腫瘍(奇形腫疑い)の定期フォローで経膣超音波検査と内膜細胞診が行われた。エコー上は子宮に明らかな異常なく、細胞診依頼書では「スクリーニング」目的で、乳癌に関する記載なし。

細胞診所見

きれいな背景に、比較的少数の異型細胞を認めた。腫瘍細胞としては小型で、結合性が弱く、重積性は目立たない。核偏在傾向やICLを認め、腺系異型細胞と考えた。背景の内膜や頚管腺上皮に異型は乏しい。検査歴にて小葉癌既往が判明し、転移性乳癌の可能性も考え、精査を勧めた。

組織所見

子宮頸部生検。被覆扁平上皮・頚管腺上皮に腫瘍性病変は認めず、間質内に小型類円形腫瘍細胞の分布を認めた。核異型や間質反応に乏しく、特に弱拡大では認識しづらく注意を要した。既往乳癌との形態学的共通性、免疫染色結果(CK+, GATA3+, E-cadherin-, PAX8-)から、乳腺小葉癌の子宮転移と診断した。

まとめ / 考察

当初は子宮由来の腫瘍性病変を念頭に鏡検していたが、少数の異型細胞が唐突に出現している印象があり、転移性腫瘍を疑った。乳癌の検査履歴から速やかに確定診断できたが、臨床情報は適切かつ迅速な細胞診断に不可欠と考えられた。

病院別