乳腺内に腫瘤を形成した悪性黒色腫の1例

山下美奈¹⁾ 岩越朱里²⁾ 久野欽子¹⁾ 大塲美怜¹⁾ 伊藤健太¹⁾
澤野智也¹⁾　渡邉幸治¹⁾　矢田啓二¹⁾ 市原周²⁾ 村上善子²⁾ 西村理恵子²⁾

乳腺 40歳代女性
1ヶ月前から右乳腺にしこり自覚。境界明瞭で可動性良好な2cm大の腫瘤性病変を認め、穿刺吸引細胞診施行。細胞診依頼書に記載されていなかったが、鼻腔腫瘍の手術歴があった。

結合性が乏しく、N/C比の高い比較的均一な細胞が多数みられる。核形不整とクロマチン増量があり、核小体は明瞭。メラニン顆粒や核内封入体(アピッツ小体)を有する細胞や、メラノファージの混在をごく少数認めた。背景に双極裸核は認めない。

所々メラニンを伴う異型細胞の増殖を認め、S-100やHMB45が陽性であり、鼻腔悪性黒色腫の乳房内転移再発と診断。

悪性黒色腫の細胞形態は様々で、メラニン産生所見が重要だが、メラニン産生が乏しい症例もあり、アピッツ小体など手かがりとなる所見がないか慎重に観察を行う。また、既往歴(特に悪性腫瘍)を含む患者情報は必ず確認する。