分泌性髄膜腫の1例

大池里枝、田中瑞穂、夏目園子(CT)
西川恵理、佐竹立成(MD)

症例

脳 80歳代 女性
主訴はけいれんと意識障害。20年ほど前から腫瘍が指摘されていたが経過観察となっていたものの、今回腫瘍の圧迫所見、脳浮腫を認めたため脳神経外科にて腫瘍の摘出術が施行された。

細胞診所見

標本には、繊細なクロマチンをもつ類円形ないし楕円形の核をもった細胞が軽度の重積性を示す集塊を形成している。集塊の中には渦巻き状構造も認められ、また細胞が平面的に配列し連続的に紡錘形細胞があり、核の両端は丸みを帯び、細胞集塊の中には核内封入体や核溝も認められた。集塊の中には球状の物質があり、不透明なものが多くを占めていますが空泡状のものも認められた。これら球状物質の辺縁に核が認められ、細胞質内に存在するものと考えられる。
臨床的に腫瘤は脳実質外に存在し、これら細胞所見を総合し髄膜腫が考えられた。しかし、集塊の中に球状物質や空胞を含む細胞が認められ、髄膜腫の砂粒体とは異なると考え、印環細胞癌に由来する細胞との鑑別が必要と考えられた。

組織所見

異型に乏しい多稜形細胞が束状ないしシート状に増生し、 所々で渦巻き状構造を認めた.。また、 径5-15umの好酸性球状物が多数沈着していた 沈着物はPAS(+), dPAS(+)であり, 偽砂粒体と考えられた. 免疫組織化学的には, 腫瘍細胞はvimentin(+), GFAP(-), S-100(-), CD34(-), EMA(+), CAM5.2(+), AE1/AE3(+), CEA(+), ki-67 index <1%であった。 以上より, secretory meningiomaと診断した。

まとめ / 考察

分泌性髄膜腫という稀な症例を経験した. 細胞診では, 通常型髄膜腫の細胞像に加えて, 細胞質内小腺腔を有する印環細胞様細胞や偽砂粒体を認めた. 細胞診のみで組織型を推定しうるとともに, 組織診に細胞診を併用することで, 診断精度向上に役立つと考えられた。

病院別