皮下に発生した分泌癌

宮島里枝

症例

右鎖骨上皮下 60歳代 女性
既往は高血圧。主訴は30年来の右鎖骨上の皮下腫瘤が徐々に増大し、5年前より炎症感染を繰り返すようになり、当院紹介となった。右鎖骨上皮下に径48×50×48mmの可動性のある腫瘤を認め、精査目的に穿刺吸引細胞診が施行された。

細胞診所見

粘液成分を背景に結合性の低下した一様な腫瘍細胞を多数認めた。核小体や核偏在がみられ、腺系病変を示唆する異型細胞がみられるが、核は小型から中型で核異型に乏しく、細胞起源や良悪の鑑別は困難であった。

組織所見

55×50mm、鎖骨上の皮下組織に、境界ほぼ明瞭、被膜のない腫瘍を形成している。濾胞様、乳頭状構造を認め、細胞質は好酸性、大小の空胞状を示す。Zymogen顆粒はない。核異型は軽度。地図状の壊死、一部浸潤性増殖を認める。核分裂像:2/10HPF、Ki 67 LI 15%。神経周囲侵襲、脈管侵襲はない。ETV6-NTRK3 fusionを認めた。
病理診断 分泌癌(皮膚原発を疑う)

まとめ / 考察

皮下に発生した分泌癌という稀な症例を経験した。細胞診では豊富な細胞質、核異型は乏しく、結合性の低下した細胞集塊、空胞状、粘液を有する細胞がみられることなどの所見に着目することが大切となる。鑑別は容易ではないが、注意深く細胞所見を拾い上げれば、分泌癌を推定できる可能性はあると考える。

病院別