耳下腺に発生した分泌癌の一例

原田隼兵1)、伊藤里美1)、川島佳晃2)、浦野誠3)、西島亜紀4)、中川満4)

症例

右耳下腺 20歳代 男性
3か月前から右耳下腺腫脹があり、前医受診。耳下腺腫瘍疑いで当院紹介となり、穿刺吸引細胞診が施行された。

細胞診所見

大型の乳頭状や粘液様物質を取り囲むように重積性のある細胞集塊を認めた。核は軽度から中等度の異型があり核小体を含む。細胞質は淡染性で微小空胞を認めた。背景にはヘモジデリンを貪食した組織球が散見された。

組織所見

腫瘍は境界明瞭で、分泌物を容れた大小の嚢胞形成を伴って異型腺上皮が多彩な構造を示し唾液腺へ圧排性浸潤を認めた。腫瘍細胞は類円形の中等度異型核とチモーゲン顆粒を含まない好酸性細胞質からなり、細胞質内空胞を多数認めた。免疫染色ではMammaglobinとS100、Pan-Trkに陽性を示し、分泌癌と診断された。

まとめ / 考察

若年、かつ異型が軽度から中等度であり良悪性の判定に難渋した。切除検体で分泌癌と診断され細胞像を再鏡検したところ、分泌癌に特徴的な細胞質内微小空胞などを認めた。分泌癌は若年発症や異型が高度でないことから良悪判定困難となりやすく、教訓的な症例と考えられた。

病院別