肺空洞病変から検出された放線菌感染症の1例
症例
右気管支洗浄液 80歳代 男性
患者は肺炎、前立腺癌、帯状疱疹、結核の既往がある男性。他診療科で依頼された頸部CTで偶発的に右上葉の異常陰影を指摘された。胸部CTでは右肺上葉に器質化を伴う空洞性病変が多発し、気管支拡張を認めた。
患者は肺炎、前立腺癌、帯状疱疹、結核の既往がある男性。他診療科で依頼された頸部CTで偶発的に右上葉の異常陰影を指摘された。胸部CTでは右肺上葉に器質化を伴う空洞性病変が多発し、気管支拡張を認めた。
細胞診所見
Papanicolaou染色では、好中球が多数存在する炎症性背景に、集塊辺縁が緑色の色調を帯びる不定形な菌塊を認めた。菌体幅は1 μm程度で均一であり、長さや形状は直線状、湾曲状、屈折状と様々で、菌体は複雑に絡み合って存在していた。またPAS染色では菌体と同時に菌塊に含まれる粘液多糖類も染め上げるため、菌体観察が困難であった。
組織所見
標本の大半は放線菌と考えられる大小の菌塊からなっており、間には好中球浸潤が認められた。またGrocott染色では糸屑状に集簇した繊細なfilamentous bacterial colonizationが確認できた。放線菌類による感染に矛盾しないとした。
まとめ / 考察
細胞診での放線菌の観察では菌塊の辺縁が緑色の色調を帯びるのが特徴的である。また喀痰や気道系の細胞診材料では、放線菌塊を認めても口腔内常在菌かどうかを慎重に見極める必要があり、炎症性かどうかが有用な判断材料となる。放線菌か真菌かの鑑別は、抗菌薬の選択上も重要であるため両者の区別は精密に行う必要がある。