脊索腫の擦過細胞診の一例

伊藤 謙吾1) 河口 由里江1) 小笠原 将人1) 川口 規子1) 竹田 美帆1) 佐原 晴人1)
島 寛太2) 北川 諭3)

症例

中咽頭 70歳代 男性
転倒後の左後頚部痛を主訴に当院受診し,第二頸椎骨折を認めた.頭頸部MRIでは第二頸椎左横突起の骨破壊を伴う腫瘤性病変を認めた.中咽頭に露出した腫瘍に対し擦過細胞診および生検が施行された.

細胞診所見

粘液様の背景に重積した細胞集塊を認めた.これらの細胞は定型的ではないものの上皮様で,広く明るい胞体が目立ち,いわゆる担空胞細胞を想起する所見であった.核の大小不同は軽度であるが,立体不整や一部に核溝,核内空胞を認め悪性と判定した.

組織所見

myxoidな間質背景に索状から包巣状の上皮様パターンで増殖する腫瘍を認めた.腫瘍細胞の多くはクロマチンの濃染する不整形の核および好酸性の胞体を有しており,空胞状の胞体を有する細胞の介在を伴っていた.免疫組織化学的に腫瘍細胞はAE1/AE3,EMA,brachyuryが陽性で,desmin,p40が陰性であった.以上より脊索腫と診断した.

まとめ / 考察

脊索腫と鑑別を要する腫瘍として軟骨肉腫が挙げられる.一般的に軟骨成分の有無と,脊索腫に特徴的な担空砲細胞の同定を行うことができれば両者の鑑別は容易であるといわれているが,両者ともに粘液様の背景を呈することがあり注意する必要がある.本症例では細胞診における粘液様の背景と担空砲細胞の存在が診断の一助となった.

病院別