診断に苦労した顎下腺腫瘍の1例

井川 莉奈1)
宮崎 龍彦2)

症例

左顎下腺 50歳代 男性
検診のUSにて左顎下部腫瘍を指摘され、近医を受診。近医のUSにて改めて左顎下腺腫瘍を認め、当院紹介受診。増大傾向あり、穿刺吸引細胞診を施行した。

細胞診所見

壊死や粘液を欠く、血性背景に核が腫大し、クロマチンの増量した類円形核を示す細胞が孤在性もしくは結合性の緩い小集塊で出現。小集塊は、厚ぼったい胞体を持ち、上皮様の結合を示す。核には、皺などの核形不整や一部で腫大した核小体を認めた。以上の所見より、筋上皮細胞由来の病変もしくはcarcinomaの可能性があると判定した。

組織所見

被膜への浸潤を示す腫瘍を認める。腫瘍は一部では硝子化した間質を背景に浸潤性増殖を示す。一方で、篩状構造や細胞内粘液空胞様構造も散見する。異型が強く、大型の核小体が目立った。免疫組織化学ではandrogen receptor, GCDFP15に陽性を示した。

まとめ / 考察

唾液腺導管癌と診断した。唾液腺の細胞診で、孤在性~結合性の緩い小集塊を見たときには、まずは筋上皮由来の腫瘍が疑われるが、鑑別として唾液腺導管癌も考慮する必要がある。

病院別