診断に苦慮した甲状腺腫瘍の一例

○大池里枝(CT),田中瑞穂(CT),山田知里(CT),佐竹立成(MD),佐藤朋子(MD)

症例

甲状腺 70歳代 女性
1ヶ月前より頭部の腫瘤を自覚し、その後甲状腺、腹壁などにも腫瘤が出現した。近医受診後当院外科に紹介受診した。PET-CTで全身に多発性腫瘤を認め、甲状腺未分化癌を疑い、糖尿病内分泌内科紹介され、甲状腺穿刺吸引細胞診が施行された。

細胞診所見

核クロマチンが顆粒状に増量し、N/C比が高い異型細胞が孤在性にまたは集塊を形成して認められた。核の長径は10μm以下と小型であった。以上の所見から低分化な癌細胞が推定された。

組織所見

全身検索にて食道に腫瘍性病変を認めた。食道生検検体では腫瘍は角化を伴う扁平上皮癌と低分化な癌で構成されていた。甲状腺穿刺検体のセルブロック標本では、甲状腺生検で認められた低分化な癌が見られた。免疫染色で腫瘍細胞はAE1/AE3陽性、CD56一部陽性を示し、PAX8, TTF1,Synaptophysin, ChromograninA, Thyroglobulin, P40, P63,Calcitonin, CD5に陰性を示した。食道の未分化癌と診断した。

まとめ / 考察

本症例は食道扁平上皮癌と共に認められた未分化癌の成分が甲状腺に転移したものと考えられた。甲状腺穿刺細胞診標本には転移性病変に由来する腫瘍細胞が認められることがあるので、甲状腺に由来する腫瘍細胞と確定診断が困難な場合は全身検索による原発巣の確定が必要である。

病院別