診断に苦慮した腺房細胞癌の1例

長嶋健二・宮崎龍彦

症例

耳下腺穿刺吸引 50歳代 女性
1~2年前より耳下腺部の軽度腫脹があり、抜歯後に腫脹が増大。MRIにて多形腺腫を疑う。

細胞診所見

リンパ球や好中球を背景にやや核密度の高い細胞集塊がシート状に出現。一部の集塊の中心部はオレンジに染まり、腔を作るような像も見られた。細胞境界がやや不明瞭で、好酸性様の細胞質に細かな空胞を認め、核異型に乏しいが核間距離が不整であった。ギムザ染色で細胞質内空胞や異染性顆粒を認めた。

組織所見

線維性間質の増生を背景に、充実性胞巣状または一部papillaryな増殖パターンを示していた。明るく抜けた胞体をもち、N/C比は低く、粘液空胞を持つ細胞も多数認めた。D-PAS染色でチモーゲン顆粒を豊富に認め、免疫組織化学ではDOG1陽性、S-100, Mammablobinは陰性、MIB-1 labeling index はhot spotで10%であり、acinic cell carcinomaと診断した。

まとめ / 考察

核異型に乏しい好酸性様の細胞質を持つ腫瘍を疑う場合、ギムザ染色における細胞質内空胞や異染性顆粒の所見が腺房細胞癌の診断に有用と考えられる。

病院別