穿刺吸引細胞診で判定に苦慮した顎下腺腫瘍の1例

山田 健太 1)、伊藤 秀明 2, 3)、古田 いずみ 1)、瀬古 憲弘 1)、
服部 和宏 1)、山村 宗幸 1)、都築 豊徳 4)、小野 謙三 2)

症例

左顎下腺 80歳代 女性
糖尿病、肝硬変にて当院通院中、顎下部に疼痛および腫れを訴え、耳鼻咽喉科を受診。1.5 × 1.0 cm 大の腫瘤を認め、穿刺吸引細胞診が施行された。

細胞診所見

粘液様基質を軸とする細胞集塊や不規則重積性のみられる細胞集塊を多数認めた。集塊の軸となる基質はギムザ染色で異染性を示しており、一部に球状硝子体も認めた。細胞採取量も多く、悪性の可能性も否定できなかったが、腫瘍細胞の異型は顕著ではなく、最終的に鑑別困難として報告した。

組織所見

肉眼的に境界不明瞭な腫瘤で、組織学的には篩状型の腺様嚢胞癌の像及びコメド壊死を伴う充実型の腺様嚢胞癌の像を認めた。

まとめ / 考察

改めて細胞診標本を観察すると、不規則重積性を示す細胞集塊は充実性腺様嚢胞癌成分であると考えられた。本症例のような所見を認めた際には、充実性成分を伴う腺様嚢胞癌を念頭に置くことが重要である。

病院別