毛母腫(石灰化上皮腫)の1例

水野晃子 納冨千洋 南谷健吾 西尾知子
(名古屋記念病院)

症例

左耳前部皮下穿刺 10歳未満 女性
8歳、女児。
左耳前部にしこりを感じ、徐々に増大し、痛みを伴ったため近医受診。
その後、内服処方にても改善せず、当院紹介。
左耳前部に15mm×25mmの皮下腫瘤あり。
【検体】
腫瘤穿刺吸引細胞診

細胞診所見

血性背景に結合性のあるライトグリーンに淡く染まる細胞質に類円形核を有する、N/C比の高い小型上皮細胞の上皮集塊部分と壊死様物質、また淡黄色の細胞質を有する無核の細胞が出現していた。また多核巨細胞も散見された。
小型細胞の集塊は好塩基性細胞、淡黄色の核の消失した細胞は陰影細胞と呼ばれる。
この症例には移行部分の細胞、類上皮細胞ははっきりしなかったが、これらより、毛母腫(石灰化上皮腫)と考えた。

組織所見

毛母細胞に類似する好塩基性細胞の増殖と、不完全な毛皮質への成熟を示す陰影細胞への移行が認められる。
好塩基性細胞は、小型でクロマチン濃縮、明瞭な核小体を示すが、これは正常の毛母細胞の特徴であり、悪性所見ではない。
写真左上には壊死様所見、右下には異物肉芽反応がみられる。

image002

病院別